syrup16gを鬱バンドと括るのは違う気がする

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syrup16gレビュー 邦楽

誰もが何らかの劣等感を持っている。

他人と比較して自分のだめなところを責めて自己嫌悪に陥ったり、生来のコンプレックスを恨んでわだかまりを重ねたり。

どんなに明るい人でも、ときには自分が嫌になる瞬間があるもんです。僕にだってそりゃあるさ。

もう13年ほど前になるけど、Syrup16g(シロップ16グラム)というバンドに出会った。

彼らの評価は一定しない。鬱バンドと言われることもあれば、希望を感じられる歌と言われることもある。あるいは一切の救いがないとも評価されることもある不思議なバンドだ。

ただ、どうしようもなく打ちのめされてしまったときは彼らの曲を聴いてみてほしい。

きっと、希望とも絶望とも言い難い何かが、あなたを奮い立たせてくれるはずだから。

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syrup16gのプロフィールと魅力

Syrup16gは1996年に東京で結成されたスリーピースロックバンド。2008年に解散したが2014年に復活。その後もライブ含めコンスタントに活動を続けたが、2018年に一時活動休止を発表した。

メンバーは下記の3人。

  • 五十嵐 隆(Vo. Gt)
  • 佐藤 元章(Ba.)→2002年脱退。後任にキタダマキ(2002年~)
  • 中畑大樹(Dr.)

MISIAが「ヨーエヴィシーン」と歌い、ミスチルが「優しい歌」で思わず叫んだり狂おしくなっていた頃、syrup16gの1stアルバム「COPY」が発売された。

ここから1年間のあいだに、彼らは合計3枚ものフルアルバムを発表することとなる。だが、決して大ヒットはせず、世間的には鳴かず飛ばずの印象のバンドであったことは間違いない。

しかし、このバンドの周りには常に熱狂的なファンがいて、僕もそのファンから薦められてこのバンドを知る由となるわけです。

ミスチルやらバンプやら、ゆずやら19やらを聴いていた僕にとって、このバンドはあまりにも衝撃的だった。

大半のJ-POPが「人生頑張れ!なんとかなる!」、「失恋が人を成長させるんだよ」と歌っていたこの時代。大衆に受ける音楽というのは得てしてそういうものだったような気がする。

そんなシーンにおいて、Syrup16gの歌はあまりにも人間臭かった。

聞き手の人生を肯定もせず、否定もしない。ただ五十嵐という男の苦悩をそのまま歌った曲だけが、ここにはある。

つらいことばかりで心も枯れて 諦めるのにも慣れて

したいこともなくて する気もないなら 無理して生きてることもない

Syrup16g/明日を落としても

この歌詞を見て「うわあああ!」ってなった人はSyrup16gにドハマリしていく。間違いない。

五十嵐隆という男について

Syrup16gの魅力を語るなら、ヴォーカル・作詞作曲を担当する五十嵐隆の話をする必要がある。

この男、世間一般的な論で言うとどうしようもない人間なのだ。

  • 高校の学園祭で飲酒、停学
  • 同時期、バリ島へ旅行中に出会った音楽に衝撃を受け、なぜか引きこもりとなる
  • 浪人を経て日本工学院専門学校音響技術科に進学するも中退
  • 理由は「嫌いな音楽にも、仕事として向き合わなければならないのがキツイ」から
  • その後バンド活動を本格的に開始するも、メジャーデビューをかけたライブでプレッシャーに圧されて客に暴言を吐き、契約破棄

こんな感じでデビューまでの道のりは全く順風満帆ではない。音楽に対して真面目に向き合いすぎるがゆえに、対価をもらい作品を作る”クリエイター”ではなく、自身の価値観を音楽に乗せて飛び立たせる”アーティスト”として活動していくこととなるのだ。

あまりにも人間臭い歌詞

彼の作る詩は、そんな自分のことを包み隠さずに言い表している。下手な綺麗事を一切入れず、無理に明るく振る舞おうともしない。ただひたむきに、良いも悪いも含めて思いの丈を吐露している。

一人きりでいるのが長すぎて 急に話しかけられると声出ないよね

基本地面ばかり見て歩くから たまに人と視線合うとキョドっちまうよね

Syrup16g/生きているよりマシさ

あまりにも人間臭くないだろうか。

ニヒリズムも感じられるように思えるけど「狙っている感じ」が無く、やけに素直に耳に入ってくる。(五十嵐自身、以前は視線恐怖症であった)

それゆえ似たような苦悩を抱えている人を中心に、いまなお圧倒的な支持を得ているのだ。

綺麗事の無さゆえに彼らのファンはメンヘラが多いとも言われる。でも、サラリーマンも彼の詩に共感できる部分が多いかもしれない。

天才だった頃の俺にまた連れてって いつの間に

どこで曲がったらよかった? どこで間違えた? 教えてよ

syrup16g/天才

グサグサ刺さる。十で神童十五で才子二十過ぎればただの人とはよく言うものだ。今仕事や人生が上手くいっていない人のハートに、ずばずば切り込んでくる。

周りの人達が自分よりどんどん先に行ってしまうけど、自分は何の進歩もなくただ足踏みしている。なんとかしなくちゃと思ってはいるけど、行動を起こす気になれない。そんな思いを持っている人がこの世にはごまんといるだろう。

でも、Syrup16gの歌を聴いていると、不思議と安心感が出てくる。

たぶん、これが五十嵐という男の才能なのだ。物事の良い面も悪い面も公平に捉えて、変に飾り立てようとせずただ正直に歌う。

世の中の誰もが持つ劣等感や駄目な部分を、彼らは代弁してくれている。だからこそ、多くの人を惹き付けるのだろう。

Syrup16gを初めて聴く人におすすめの曲3選

この記事で初めてシロップを知ったという人のために、「これを聴けばsyrup16gがだいたいどんなバンドかわかる」という曲を3つ紹介しよう。

美メロと儚さの際立つ「さくら」

syrup16g さくら

全てを失くしてからは どうでもいいと思えた

枯れてしまったさくらの花 かき集めているんだろう

syrup16g/さくら

出会いと別れの象徴として使われる「さくら」も、五十嵐の手にかかればもうすでに枯れてしまっているし地面に落ちている。

その後も全編通して桜の儚さにフィーチャーしたような歌詞が続く。「悲しくて悲しくて涙さえも笑う」なんて心情描写、これ以降見たこともない。

こんなに悲壮感ただよう歌詞なのに、メロディが美しすぎるのも良い味を出している。出だしからインパクトがすごい。

ライブでは全く歌詞が異なるバージョンで歌うこともある。たぶんかなり適当に歌っている。

等身大のラブソング「Your eyes closed」

syrup16g – your eyes closed (歌詞つき)

愛しかないとか思っちゃうヤバい 抱きしめてると死んでもいいや

って たまに思うんだ

Syrup16g/Your eyes closed

このバンドはほとんどラブソングを歌うことがないのだが、そんな中でも珍しくできた曲がこちら。

好きすぎてヤバイみたいなことを言っておきながら最後に「たまに思うんだ」と歌うあたりがものすごい分かりみ。こういう感情って、不意に湧き出てくるんですよね。

バンドを代表する名曲「生活」

Syrup16g 生活

君に言いたいことはあるか そしてその根拠とは何だ

涙流してりゃ悲しいか 心なんて一生不安さ

Syrup16g/生活

言い切っちゃいますからね。「心なんて一生不安さ」って。でも世の中の綺麗事を否定するようには聞こえなくて、人間なんてそんなもんじゃんっていうある種の寛容さえ感じられる。

この曲はほぼ3コードで構成されているが、随所でアレンジを変えているので展開が非常に豊富。作曲・編曲能力がハイレベルなのもこのバンドの魅力なのだ。

まとめ:Syrup16gは鬱ではなく素直過ぎるバンド

ついつい先延ばしにしたり、皮肉めいたことを言ってしまったりと、人間生きていればマイナスに働く行動を取ってしまうことが必ずある。

だからこそ、前向きにさせてくれるような音楽は大衆に受けるんだろう。

でも、常に前向きな気持ちを保つことはとても労力がかかる。そんなときは気の置けない友人に愚痴を聞いてもらうなりなんなりして、心のバランスをキープしているのだ。

Syrup16gはおそらく、僕たちが普段抱えているもやもやを全部代弁してくれているのではないだろうか。

素直過ぎる言葉はときに人を傷つけるが、このバンドは誰もが抱えている不安や悩みのタネを包み隠さず歌っている。

今なお多くのファンが愛してやまないのは、人間臭い不格好な姿をさらけ出しているからに違いない。

2014年に再結成し、毎年新曲の発表やツアーを続けてきたが、2018年に再び休止期間へと入ってしまった彼ら。次に戻ってきたときはどんな言葉を僕たちに届けてくれるのだろう。

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