アーティスト紹介の切り口も色々あるものですが、今回は「中毒性」と「変態的」という2つのキーワードをもとに2019年注目の邦楽アーティストを紹介します。
初めにお断りをしておきますと、今回紹介するアーティストは、初めて聴いた時は「え、何これ?」と思ってしまいがちなものばかりです。ただし、2,3度聴いていくといつの間にかその魅力にドハマリする、中毒性があるアーティストをセレクトしています。
本当は全員個別で記事を書きたいくらいなので、ゆくゆく追加していこうかと。それでは早速どうぞ!
キモくてキャッチーという斬新さ。「ニガミ17才」
のっけから誹謗中傷とも捉えられかねない見出しですが褒め言葉なんだからね!
「ニガミ17才」。メンバーの風貌も、出自も濃いバンドなのです。
・ 岩下優介(ヴォーカル、ギター):元「嘘つきバービー」のフロントマン
・ 平沢あくび(コーラス、シンセ):元女優。かわいい&かわいい
・イザキタツル (ベース):この方だけ情報が少ない。複数のバンドを兼任してた?
・小銭喜剛(ドラム):元「ミドリ」のドラム。どうりでタイトなわけです
結成は2015年。2017年に1stミニアルバム「ニガミ17才a」をリリース。2018年6月に2ndミニアルバム「ニガミ17才b」を発表。
結成年数からいえば新人に分類されるものの、前述の通りキャリアを積んでいる方たちが集まっていますので楽曲の完成度は非常にハイレベルです。
とにかくダンサブルで小気味良いナンバー「ただし、BGM」。ラップと日本語って相性が悪いとよく言われますが、岩下のMCは日本語につきまとう「拍」さえも上手いこと曲のアクセントに利用していて、聴いていて心地良いです。
そして、良い意味でキモい。
各パートのタイトな演奏もキモいといえばそうですが、何よりも岩下さんの存在がミソ。彼がいるからこそシンセのあくびちゃんが一層華やかに見えるし、バンド全体の雰囲気も引き締まる。そういう肯定的な意味のキモさがこのバンドにはある。
そして歌詞もコード進行も割とカオスなのに、全体を通して見るときっちりとキャッチーにまとめています。
やたら耳に馴染むメロディも、聴けば聴くほど論理的なフレーズの集合体なんだと気づかされます。キモさを含めて、まさに「中毒性」のお手本のようなバンドじゃないかと。
今年は各種フェスへの出演、フルアルバムのリリースも期待されます。生あくびちゃん見たい!
サイケ&アングラ。次世代の音楽を担う「Tempalay」
個人的にはKing Gnuと並び、これからの日本の音楽シーンを担う重要なバンドになってもおかしくない存在だと思ってます。
読み方は「テンパレイ」。 小原綾斗(ヴォーカル、ギター)、 藤本夏樹(ドラム)、竹内祐也(ベース。2018年脱退)の3人が結成。2018年にトラックメイカー、モデルなどマルチに活躍するAAAMYYYを加えた新体制となりました。
なんというか、やりたいことやってる感がすごいですよね。
西海岸的なサイケデリックな音、ローファイでチープなMV。
それらが混ざり合い醸し出す、そこはかとないアンダーグラウンド感が本当にたまらない。
「このリフ面白いんじゃない?」と1曲の中に色々詰め込んだ結果、煮物みたいに色んな具材が混ざり合って独特の世界観を築いてました、という感じがすごく好きなんです。
このバンド、何がすごいってこれだけセオリーから外れたことをしているのに楽曲が全く破綻していないんです。
奇妙で濃密なフレーズ(材料)を緻密な計算で調理する。結果として出来上がった音楽は、もはやサイケを通り越してポップ。どんなジャンルにも属さない唯一無二のバンドになってます。
「【レビュー】King Gnu(キング・ヌー)は次世代のポップシーンを担うリーダーとなるか」の記事でも触れましたが、 アーティストとして「やりたいこと」と、リスナーの琴線に触れるポピュラリティのバランスを絶妙に保っているんですよね。
King Gnuにもそういう節があって、それゆえにこの2つのバンドが次世代の音楽の担い手となっていくのではないかと勝手に思ってます。
ちなみにMVはKing Gnuのフロントマン・常田大希が関わるクリエイティブ集団「PERIMETRON」が制作。80年代のカルチャーをごちゃ混ぜにしたヴェイパーウェイブ的な要素が目を引きますね。(この雰囲気、何かに似てると思ったらAC部か)
新体制となり新たなスタートを切ったTempalay。今年目が離せない存在となることは間違いないでしょう。
ガレージ・ロック好き必見のロックデュオ「ドミコ」
ドミコはさかしたひかる(Vo/Gt)と長谷川啓太(Dr) によるロックデュオ。結成は2011年なので、もう8年のキャリアになるんですね。
2014年あたりからロキノンを中心にプッシュされているのですが、なぜもっと一般的に認知されないのが謎で仕方がないバンドです。だって、めっちゃかっこ良いんですもの。
ざらっとしたギターの音と、ひたすらクールなヴォーカル。 ストロークスやアークティック・モンキーズを代表するガレージロックリバイバルの流れを汲みつつも、どこかドリーミーなエッセンスを感じさせる音楽性が特徴です。
ついつい無限ループしたくなる、ごきげんなグルーブ感がとにかく最高。もっとみんな聴けよ!
Aメロ→Bメロ→サビと進行することは少なく、非常に洋楽チックなナンバーが多いのも特徴のひとつでしょう。
2019年2月に3rdアルバム「Nice Body?」をリリース。今年のライブに注目したいバンドです。
今四国で一番クリエイティブなグループ「GEEK! GEEK! GEEK!」
「GEEK! GEEK! GEEK!」は2018年9月に結成されたばかりの、徳島県を拠点に活動する3人組グループです。
本人たちは「バンド」という括りで自身のことを呼んでいないのでここで紹介するのは少し違うのかもしれないですが、「2019年注目」という意味では紹介せざるを得ないアーティストなのです。
GEEKっていうのは英語のスラングでオタクの意味。メンバーはzue(要塞)、ちくげ(音像)、マツミヤカズト(言説)の3人です。アートワークもセルフプロデュースなんでしょうかね。
メンバーのちくげは作曲家としても活動しています。音楽番組「今夜、誕生! 音楽チャンプ」で優勝した中学生ボーカル丸山純菜を迎え結成したバンド・POLUにも楽曲を提供してたりと、実績もある人なのです。
ただ、そうした活動を通じても、彼ら自身の音楽が注目を浴びることはありませんでした。そして彼らはこのような思いを公式サイトで述べています。
裏方として「人気者」を支え、売れれば無視され続けた三人が、ついに自らの「作りたい」という欲望を自らのために解放するべく、あるいはいくらあがいても報われなかった日本の音楽への「復讐」として始めたのが今プロジェクト「GEEK! GEEK! GEEK!」である。
GEEK! GEEK! GEEK! 公式サイトより
熱くないですか? スーパーロボット大戦的なパトスにあふれてないですか?
思わず応援したくなるようなストーリーを抜きにしても、楽曲はさすがの完成度を誇っています。エレクトロでポップなチューンもあれば、アンビエントなナンバーもあったりと非常に多彩です。
曲ごとに表情を変える変幻自在なサウンドプロダクションは中毒性抜群。今後の活動が非常に楽しみな、四国で一番クリエイティブなアーティストだと思ってます。
変態の代名詞みたいなバンド「八十八ヶ所巡礼」
先日合コンで「あ、この子絶対SiMとか10-FEET好きだわ」っていう雰囲気のショートボブの女の子がいまして。お目めパッチリでアヒル口の可愛い子だったんですが、メイクや服装がライブハウスによくいるあの感じそのまんま。
でも話してみると「京都大作戦もモンバスも行ったこと無いです~」っていう、意外とお嬢様チックな女の子だったんです。
あぁ、やっぱり人を見た目とか雰囲気で判断しちゃいけないなと改心しつつ、じゃあどんな音楽聴くの?って質問したら、
「八十八ヶ所巡礼」
つって。
もうね、脊髄で「え?」って二度聞きしましたよね。
どんな変化球投げてくるんだよと。
全盛期の伊藤智仁かよ。
だって、こんな人たちですよ?
とまあ、そんなことがあったので、 この方達に関してはもうベテランの域に達しているのですがエクストラ枠として紹介します。
「八十八ヶ所巡礼」のメンバーはこちら。
・マーガレット廣井(Ba.と歌と主犯格)
・Katzuya Shimizu(Gt.と参謀と演技指導)
・Kenzoooooo(Dr.と極道と含み笑い)
※公式サイトの原文ママ
どこかで道を踏み外した川谷絵音のようなベーシストに、風貌からプレイングまで正統派の超テクギタリスト、ぱっと見た感じ一人だけ生きている世界が違うドラマー。
誰一人として方向性を共有できていない外見に違わず、演奏も3人がひたすらアグレッシブに攻め立てていてめちゃくちゃ面白いです。
お聴きの通り、全員はんぱなく演奏が上手い。特にギターどうした。
八十八ヶ所巡礼の曲は各パートのユニゾンよりも個々のフレーズに重きを置いてる印象を受けますが、これもあえてそういう編曲にしているのだそう。
https://rooftop.cc/report/2018/08/01100000.phpより引用
「八十八ヶ所巡礼では、ベースの音域が真ん中にあるんですよ。ドラムが下にいて、ギターが上にいて、真ん中にベースがあって、ベースの合間をぬってヴォーカルがいるっていう感じ。」
改めて聴いてみるとたしかにそんな感じ。独特の音作りしていますよね。というかなんなのだ、このMVは。
演奏テクも風貌も変態の代名詞みたいなバンドですが、業の深さすら感じる中毒性がある楽曲ばかりです。
デビュー以来ほぼ毎年アルバムをリリースしてきていたのですが、昨年は3年ぶりとなるニューアルバム「凍狂」をリリース。新たな楽曲を引っさげ、どんなパフォーマンスを繰り広げてくれるのか。今年のライブが楽しみなバンドです。
まとめ
最後に全部持っていかれた感も否めないのですが、いずれのバンドも今年の活動が注目されることは間違いないアーティストばかりです。
今回紹介しきれなかったアーティストもいるので、今後もいろいろな切り口でまとめ記事を作成していこうかと思っています。ではまたその日まで!
コメント
とても参考になりました。ライブに行ってみます。他の記事も拝読、時に挟み込まれる風流なフレーズに吹き出し車中読むのは危険でした。中でもこの中毒性バンドシリーズ最高、ぜひ2020年vir.よろしくお願いします。