このバンド、邦ロックファンの間ではどんな感じの評価を受けているのかが未だにはっきりとしないような気がしてます。
「NARUTO」や「ハイキュー!!」、「宇宙兄弟」といった人気アニメの主題歌にも採用されているので、一般的な認知度はそこそこあるのかと思いきや案外そうでもなかったり。
特に初期の曲はカラオケで入れるとイントロで「BUMP?」って言われるのが関の山。悲しい。
前もって言っておきますが、決して批判をしようとしているわけではなくて、僕はこのバンドがすごく好きなんです。もっと売れてもいいんじゃないかと思うわけなんです。活動も精力的にしているし、今の時代の流れに乗らず、すごく素直なバンドサウンドを奏でてくれるし。
ということで、今回は個人的にもっと評価されるべきと思うバンド・tacicaがなぜ売れないのかを考察していきます。
tacicaのプロフィールと特徴について
まずは初めてこのバンドのことを知る人のために、例によってプロフィールの紹介を。
tacica(タシカ)は2006年に北海道で結成、2008年にメジャーデビューしたロックバンドです。
- 猪狩翔一(Vo. Gt.)→嫁はチャットモンチーの橋本さん。
- 小西悠太(Ba.)→口癖の「確か…」がバンド名の由来
- 坂井俊彦(Dr.)→2014年脱退。僕もショックだった。
デビュー当初はタワレコあたりが「北のバンプ・オブ・チキン」と謳いまわっていたような覚えがあります。
だいたい声質とコード進行のせいかと思いますが、2ndアルバム「jacaranda」からはもう独自の世界観を築きあげていました。かつてMUSEがレディへのパクリと批判されたようなもんです。
挙げたはいいもののなんかしっくりこない…
やっぱりtacicaはオンリーワンのバンドなのでしょう
tacicaはなぜいまいちヒットしないのか
結論から言うと、彼らの長所である部分が一般的にあまり受けないんだと思うんです。
一つずつ詳しく見ていきましょう。
曲がキレイにまとまり過ぎている
tacicaの曲はすごく聴きやすいし、かっこいい。
デビュー当初から新人とは思えないような落ち着きがあって、曲の展開も現在と比べても大きな変化が見られず一貫して素直なバンドサウンドを奏でることに徹しています。
Vo.猪狩はどことなく重たい、マット感のある声質。ギャッツビーで言うと絶対に灰色だわっていう感じで歌ってますが、当時活動数年目の新人とは思えないですよね。
逆に言えば、良くも悪くも尖った部分が無い気がします。(すごく好きなんですが)
下手ウマ系では無いし、テクで攻めるわけでもない。ただ純粋に洗練された音楽を奏でている。
この曲「人鳥哀歌」なんかもそうですよね。耳に残りやすいメロディであるがゆえに、もうひとつ個性が欲しくなるような。
シンセやビートマシンをバンドの中に取り入れた曲が「売れ線」になって久しいですが、彼らはデビューから一貫してギター、ベース、ドラムで構成された正統派ロックバンドです。
ブレないであり続けるのは長所なのですが、トレンドからはむしろ遠ざかっている。これが日の目を見ない原因のひとつなのでしょう。
当初「似ている」と言われたバンプも、初期と今の曲を聴き比べれば「誰!?」ってなりますものね。20年以上もやれば色々変わりますよね、そりゃ。
歌詞の世界観が独特過ぎる
天井と床だけで出来た家に住みたいんだよ 壁に打つからないで発射したい 闇雲に彷徨えるコースター 馳せる
tacica/Co.star
「住みたくねえよ」と歌詞先行のリスナーは15秒で戻るボタンをクリックするでしょう。
いや、この抽象的で哲学っぽい感じの歌詞こそtacicaの魅力なのですが、聴きやすいメロディとは裏腹に、あまりにも独特の世界観を築き上げてしまっているんです。
他にも、
理由を知らない相槌の代わりに誰かが傷んでて
tacica/ジャッカロープ
それを知らない僕たちの命の代わりに今日が死んでくれる
心臓の様に特別な居場所は無いとして 動いた身体は嘆いていないかな
tacica/人間1/2。
でも尊い生命か それの反対は何と呼ぶ 経験に囲まれてもう片方を探している
などなど。Google翻訳で「英→日→英」と再翻訳でもしたのかというほど、やけに遠回りな言い草。
でも読めば読むほど味わい深いんです。遠回しな言い草の中にも確固たるテーマがある。するめソングならぬ、するめリリック。これぞtacicaの魅力!
歌詞の難解さも色々ありますが、「踊ってない夜を知らない」みたいな、「タンスでダンスする現状」みたいな方向性とは180度違うことが分かるかと思います(別にフレデリックを馬鹿にはしていない)。
大衆受けする音楽の歌詞には、共感を得られる心情描写がどこかしらに入っているものです。
tacicaの歌詞も決して意味不明なことを言っているわけではないのですが、言い回しが非常に独特。
それって個性でもあり長所でもあるのですが、初見リスナーにはその世界観が分かりづらく、まず曲の良さだけで勝負せざるを得なくなっています。
メディアにほとんど露出しない
散々書いてきたものの、正直最大の原因はこれ。ラジオはおろか、雑誌のインタビューすらほとんど受けない。初期は顔出しもしてなかったですもの。フード深くかぶっちゃって。
あとフェスにもほとんど出ないんですよね。オファーはきっと結構来ているはずなのですが、地元北海道のライジングサンにも出ていないんですよね、不思議なことに。
本人たちもメディアの情報で売れたいと思っていないのかもしれませんが、本当にそうなら上述したようなアニメとのタイアップも受けていないはず。
真相は神のみぞ知る。その椅子からは何色に見えるだろう(この一文が分かればtacicaファン)。
ただ、その代わりライブ活動は相当積極的に動いています。やってないとき無いんじゃないかってくらい縦横無尽に全国駆け巡ってますので、お近くの方はぜひ一度拝見していただきたい!
まとめ:taicaは良いバンドだからとにかく聴け!
以上、tacicaがイマイチ日の目を見ない理由について考察してきましたが、彼らすごく良いバンドなんです。もっと知ってほしいんです。
国内外問わず純然たるロックバンドが減ってきた今、tacicaのように自分の哲学を持って活動を続けるバンドは貴重になりつつあるかと思います。邦ロックファンの方よ、もっと彼らのことを広めておくれ。
▼おすすめのアルバム
tacicaの世界観が凝縮された名盤です。ご査収くださいませ。
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